袋を設計する際は、実際にどの程度1回の発注で納品することが出来るかを考えておかないといけません。この章では、その基本となる考え方をまとめていこうと思います。基本を知っておくと、見積もりを取らなくても、どの程度の袋ができるかや、見積りとこちらの要求があっているかの確認が出来るようになります。
フィルム原紙の基本単位
袋を発注する単位は、基となるフィルム原紙の長さで決まります。原紙はトイレットペーパーのようにロール状にまとめられていますが、日本ではそのロールの長さは基本4,000mになっています。ここから出来高を増やしたいときは、8,000m、12,000mと4,000mの倍数で増やしていきます。1lotの長さが4,000mで、袋のサイズによって原紙の幅が最適なものが選定されます。
原紙の幅は、原紙の種類やメーカによって様々ですが、多いものだと20mm単位で幅の種類が用意されています。このおかげで、製造する袋のサイズによって無駄が出来るだけ少なく、価格も最適な状態で原紙を調達することができます。
以前は半ロットといって2,000mで取り寄せてくれることもありましたが、最近は業務効率化などの影響で2,000mを扱ってくれるところもほとんどなくなりました。2,000mでする理由は、初回で動きが悪いときの在庫を減らすためや、1品当たりの回転が少なく、長期在庫で袋の劣化や落版をさけるためです。
面付け
フィルム原紙に印刷するために版を作りますが、袋の表面、裏面のデザインを版の中に収めていくことを「面付け」といいます。通常、裏表を横に1セット並べて1丁取りとします。これを2セット並べられるなら2丁取り、3セット並べられるなら3丁取りと面付けが増えていきます。

また、面付をする際、「横取り」「縦取り」と言って、デザインをどの向きで配置するかも決められます。横取りの場合、フィルムの巻き取る方向に対してデザインを90度回転させて配置します。

横取り
フィルム原紙の流れ方向に対して、デザインを90度回転させて配置します。袋の短い方で4,000mを分配していくので、同じ丁取りだと縦取りより多く袋が製造できます。多くの三方製袋は横取りが主流です。理由は次の項目で説明します。
縦取り
フィルム原紙の流れ方向(巻き取る方向)に対して、まっすぐデザインを配置します。通常袋は縦長が多いので、同じ原紙幅だと横取りより1丁分多く取れるときは出来高が増えます。同じ2丁しか取れないときは、横取りより原紙幅の長さを小さくできるので、原紙価格で見た場合、その価格を抑えることができます。しかし、巻取りの長さに対して1袋に多くの長さを使うので、この場合出来高は横取りより少なくなります。チップスのような背張りの付いたピロー包装の袋は、通常、デザインに対して背張りシールが真っ直ぐ縦に、上下のシールが横向きに付くので、この縦取りになります。
カット性と縦取り・横取りの関係
フィルムには流れ方向があり、巻き取る方向に流れ方向を持つ性質があります。フィルムは流れ方向に対してさけやすい性質があるため、縦取り、横取りをする際は、その方向も考慮すると完成した袋の使い勝手が良いものになります。
例えば、フィルムは流れ方向に対して袋を90度横にする横取りにした場合、通常の三方製袋の切り口は流れ方向に対して平行に付けるようになります。これで切り口を手で割いた場合、フィルムの流れ方向に向いて袋を開けていくので、比較的まっすぐ袋が開けられます。
これを縦取りで配置していた場合、フィルムは流れ方向に対して垂直に切り口が向くので、袋を開けた時に流れ方向に切れ目が引っ張られて斜めに切れていったり、NYやLLDPEのような伸びやすい材質で構成されていたりすると、非常に切りにくいものとなってしまいます。そのため、三方製袋は横取りと相性が良いのです。
袋の取れ高の簡単な計算
ここまで来ると、どのくらい袋が4,000mで出来るのか想像できると思います。原紙フィルムは4,000mで、それに対して縦、横の向きを決めて、何枚配置するかで決まるので、以下の式でまとめられます。
横取りの場合:
原紙の長さ ÷ 袋の横幅 × 丁取り数 × 歩留まり(%)
例えば、4,000mの原紙で、サイズが縦200mm×横150mmの袋を横取り2丁で作る場合。
(今回、歩留まりは85%くらいに設定します。)
4,000m ÷ 150mm × 2 × 0.85 ≒ 45,000枚
この時に、見積りに記載されている数量が34,000枚くらいのだと、横取りではなく縦取りで計算されていると分かります。「袋の横幅」のところを「袋の縦幅」にして計算すると算出できます。(歩留まりはメーカごとで違うので、正確にはメーカに聞いたほうが良いですが、90%前後のところが多いと思います。)
まとめ
この記事では、袋の数量の決まる理由を説明しました。まとめると以下になります。
・原紙の基本ロットは4,000mで、版に配置する袋の向きによって取れ高は変わる。
・袋の向きによって、縦取り・横取りとなり、それぞれ向き不向きが存在する。
・袋の取れ高は、原紙の長さと袋のサイズから割り出すことが出来る。
どのように袋が取られているか知ることで、出来上がる枚数が確認できるだけでなく、トラブルがあったときの原因追及やより使いやすい袋にするときの知恵となり、助けとなると思います。参考にしてみてください。