食品包装には、使用用途によって様々な機能性を持たせることができます。それらは必ずしも必要な機能ばかりだけではありませんが、使用者の使い勝手を良くしたりするための、ちょっとした気遣いが詰まっています。ここでは、それらの一例を紹介したいと思います。
チャック
チャックは、最も定番の付加機能です。使い切りの製品であれば、残ることがないため不要な機能ですが、調味料や乾燥麺など、量があって日持ちする商品にはあると便利な機能です。残ったときにそのまま袋で残すことができ、テープやゴムなどで留める必要もありません。
チャックにも色々なタイプがあります。普通にただ留めるだけのものだったり、耐熱性があるもの、二重になっているもの。用途に応じて使い分けができるほど種類があります。
このように種類も多いため、作り手から見た注意点を挙げておきます。
1.使用環境
まずは、使用環境です。チャックを付けたい袋が、どういった環境で製造されるか、流通されるか、使用されるかを考慮した、チャックの選定です。惣菜などでは殺菌する袋もあると思います。その際、チャックが耐熱性がなければ使えなくなります。さらに、殺菌環境(温度や時間)によっても判断が必要になってきます。反対に冷凍するものでは、冷凍耐性の有無の確認が必要になります。
また、その商品の特徴によっても変わってきます。開封後も日持ちするような商品であったり、購入者が冷蔵することが当たり前のような商品であれば、チャックは付けられますが、開封後そもそも日持ちしないような商品であれば、チャックを付けることで購入者を勘違いさせてしまい、ガビを発生させてしまうなどトラブルの起因になってしまいます。
2.取り付け位置
取り付け位置にも注意が必要です。チャックは開封口の下に取り付けられます。切り口に密着した位置に設置してしまうと、袋が開封されるときにチャックのすぐそばを切り取っていくようになり、指が入る隙間がなくなり、開封しにくくなってしまいます。
また、チャックの幅は20mmほどは必要になるため、袋の内寸も気を配る必要があります。チャックを付ける前の内寸が内容物の量に対してちょうど良いのであれば、チャックをつけることで内寸が減ってしまいます。チャックが付くことで、作業性が悪くなったり、内容物が入らなくなる可能性もあります。さらに、袋サイズをチャックを付ける分、縦幅を長く取ったとすると、ケースサイズの変更は必要ないか、包装工程での不具合は発生しないかなども確認が必要です。
3.価格
こういった付加機能をつける場合は、価格にも注意が必要です。チャックを付ける場合は、材料費や取り付ける手間が増えるため、価格的にもチャックを付けない時より上がってきます。サイズや性能によりますが、1〜2割、通常の袋より割高になることは覚えておいた方が良いでしょう。
直進カット
直進カットは、開封性を上げるための機能として有用です。袋には方向性があるため、開封方向合わせて設計しておけば比較的真っ直ぐには開封させることはできますが、材質が硬いと力が非常に必要だったり、開封者のカットする方向で切れ具合が変わるなど、開封にストレスがかかりやすくなります。ここでカット性を補助する機能を付けることで、これらのストレスを緩和させられます。
1.フィルムによる直進カット性
構成フィルムに直進カット性のあるものを選ぶことで、直進カット性を持たせる方法です。フィルム自身に直進性を持たせることで、真っ直ぐ切れるようになります。フィルム構成全てに直進性のあるフィルムを選択するわけではなく、そのうちの1つのフィルムに直進性を持ったものを選定することで、効果は出ます。後で加工するわけではないので、比較的価格負担も少なくて済みます。
2.レーザー加工でガイドをつける
袋が仕上がった後に、レーザーで袋の表面層を削ることで、その線に沿って切れるようになります。フィルムによるカット性よりもガイド性がよく、袋の口に段差をつけることができるため、開封性も良くすることが可能です。後加工になるため、価格的にはフィルムに直進カット性を持たせるよりも割高になります。またフィルム表面を傷つけるため、使用環境やバリア性の有効性などは確認しておく必要があります。
電子レンジ対応
近年使用が増えてきている電子レンジにそのまま入れて、温めることができる袋です。惣菜など自宅でも簡単に調理が済む方法として注目されています。
1.蒸気の逃げ口
電子レンジで袋を開封せずそのまま温めると、袋の中で水蒸気が溜まり袋が膨らんできます。膨らんだ状態で続けていると、袋が限界を超えて破裂してしまい、事故の危険性があります。それを防止するために電子レンジ専用の袋には、開封せずとも中に溜まった水蒸気を放出する逃げ口が用意されています。
その逃げ口は、通常のシール部よりも品質に影響ない範囲で弱めにシールがされており、袋の内部が一定の圧力になると、そのシール箇所が他のシール部より先に剥がれて、水蒸気が抜けるように設計されています。そうすることで、袋全体が破裂することを防ぎ、事故を防止します。
なお、内部の圧力でシールが剥がれる構造になっているため、袋詰めの段階で袋を膨らませるような工程があるラインは、注意が必要です。その工程で袋が膨らむことによって、水蒸気を抜くためのシール部が剥がれてしまう可能性が考えられるためです。
2.サイズ制限と価格
電子レンジ対応の袋はまだまだ使用量から見ると少ないため、使用できるサイズに制限があります。各メーカで数パターンのサイズ規格が用意されているため、そこから中の製品に最適なサイズを選定することになります。それ以外のサイズを使用しようとすると、型代がかかるためコストが上がったり、想定されたサイズでないため、想定以上の圧力がかかることによる破袋の心配がないかなど、別途テストが必要になってきたりします。
また価格も、複雑な機構が付くため、まだまだ非常に高額な状態です。通常の袋の何倍もの単価を想定しないといけないため、ロットが多く必要であったり、設定価格に全く合わなくなるなど、考えなければならないことが出てきます。
まとめ
今回は3種類ほど袋の付加機能を紹介してきました。これら以外にも袋には多くの機能性があるため、製品に求められる内容をよく把握しながら、選定していくと良いと思います。
また、技術は常に変化していきます。以前調べていたものが数年経って、価格が変わっていたり、機能が変わっていたりといったことは多々あります。気になる機能があれば、定期的に調べ直してみるのも新しいことの発見につながっていくと思います。