【食品包装基礎】(8)フィルムのグレード

フィルムのグレード 食品包装基礎

 食品包装用フィルムには、各メーカ、同じ材質(例えばCPPなど)で様々なグレード(種類)を用意しています。それは、用途に応じて使い分けるためにあるのですが、見積りを依頼する側(食品メーカなど)からすれば、あまり意識することがないことだと思います。

 ここでは、細かなところはさておいて、どういったことを意識しておくと、フィルム選定に役に立つかの視点で見ていきたいと思います。




フィルムのグレードとは

 フィルムのグレードとは、同じ材質のフィルムに対して、基礎物性や機械的・化学的性質などの特徴別に分けたもので、各原紙メーカがそれぞれに用意しています。PETにはPETで、CPPにはCPPで、数十にもグレードを揃えているものもあります。

 それぞれのグレードには、引っ張ったときの耐性はどのくらいで、熱に強いのか、何度から溶解するのかなど、目的に応じた項目と値がテストや検査をもとに揃えられていて、一覧で確認することが出来ます。それぞれのグレードには「型番」が付けられているので、このメーカーのこの型番と言えば、原紙メーカーの方やコンバータの方であれば、話が通じると思います。

 例えば、食品メーカーの方が見積りを依頼するときに、「商品を入れて熱処理できる袋で見積りをお願いします。」と言ったとします。このとき、コンバータの方は耐熱性のあるフィルムを選定していきますが、その時にどういった内容物でどのような熱処理をするのか尋ねられると思います。これは同じ熱処理でも熱のかけ方や時間によって、選ばないといけない材質やグレードが違うためです。

 こういった場合は、前もって商品の特徴や熱処理の条件を公開できる範囲で伝えておくと、やり取りも1回で済み、より正確な見積りが上がってきます。これを曖昧にして始めると、後々もっと高級なグレードを選定しないと熱に耐えられないなど問題が分かり、価格が見積り当初より上がるような手間が発生するようになります。

 グレードを覚える必要はありませんが、条件によって選定されるフィルムのグレードが変わるということを知っておくと、トラブルが少なく、スピード感を持った対応が出来るようになると思います。


様々な特徴を備えたフィルム

 グレードの意味が解ったところで、フィルムにはどういった特徴があるか見ていきましょう。

 例えばCPPフィルムで、透明性のところに「透明」あるいは「乳白」と記載があったとします。 これは書かれた通り、フィルムが透明か、それとも乳白色になっているかを表しています。おしぼりは白っぽい半透明の袋に入って出されることがあると思います。これは、印刷で白く塗っているというよりは、元々のフィルムが乳白色をしているためです。これを透明のグレードの方を指定すると、袋の性能としては同じで、おしぼりの中がクリアに見えるおしぼり袋が誕生します。

 次に、耐熱性とバリア性を備えたフィルムで、よく透明蒸着PETが使われますが、透明蒸着PETには、以下のような項目がグレード一覧の中にあります。

・水蒸気透過度
・酸素透過度

 これはバリア性を表す用語で、1日あたりどのくらいの体積の水蒸気や酸素がフィルムを透過するかを表しています。これが0.5だったり0.1以下だったり、グレードで別れています。商品によってはこの数値が重要になることもあるので、バリア性が必要な商品のときは、注意しておきたい項目です。また、それらの数値を持ったグレードには、耐熱性の基準もあります。ボイルまでしか対応していないとか、レトルトまで出来るなど。これらの条件で要となるところが抜けないよう、依頼する側は丁寧に情報を公開してあげてください。

 最後に注意しておきたいことは、条件を言ってグレードを選定してもらいますが、あくまでそれは「一般的にその条件ならこれが最適に近いだろう」という選定にしかなりません。最終的にはこれを構成に入れた食品包装袋を使用するメーカ側でテストをして、使用できるか判断しなければなりません。そのテスト結果が良ければそのまま使用できますし、駄目であれば、どういったところが駄目だったかをコンバータや原紙メーカーと情報交換して、再度グレード選定するなど対応を取る必要が出てきます。

まとめ

  今回はフィルムのグレードについてまとめてみました。以下が要点となります。

 ・フィルムには、それぞれのメーカー・材質ごとにグレードが設けられている。
 ・グレードによって特徴が変わるため、中に入れる商品に応じた選定が必要。
 ・最終的には、自分たちでテストをして確認する必要がある。

 最近は、チャック付きの袋もよく見かけます。チャックもプラスチックから生成された包装資材の一部です。実は、そのチャック一つ取っても、開けやすさを追求したものや、熱に強いものなど、何十というグレードがあります。興味ある方は調べてみてくださいね。口を閉めるという機能に特化したプラスチックなのに、その数には驚きですよ。