【食品包装基礎】(10)ピンホール対策の考え方

ピンホール対策の考え方 食品包装基礎

 食品包装に求められる安全性として、ピンホール対策があります。ピンホールとは、食品包装の表面に開いた小さな穴で、食品の品質に影響を与えることがあります。すべてのピンホールを防ぐことは難しいですが、食品包装の視点からどういった対策があるか考えていきたいと思います。


ピンホールとその原因

 タイトルでも述べましたが、ピンホールとは食品包装の表面に開いた小さな穴です。そもそもピンホールがなぜ品質に影響するかというと、食品包装では中の食品を長期に渡り一定の品質に保つ役割がありますが、小さな穴が開くことで外気が入り酸化を促したり、菌が入りカビや腐敗を引き起こす原因となります。食品の品質を保つには、ピンホールは大きなリスクとなってしまいます。

 では、このピンホールがどうして開くのかというと、大きく分けて2つの視点があります。

 1つ目は外的要因によるピンホールです。製造中や輸送中、あるいは購入して保管に至るまでに、食品包装は、さまざまな環境で場所を変遷していきます。その道中で、引っ掛けたり、ぶつかったりすることで、ピンホールが開いてしまします。

 例えば、包装後にプラスチックケースや金属ケースに並べる工程があったとします。そのケースが長年の使用で劣化していて、傷が入り、いわゆるバリができていると、そのバリに引っかけただけで薄いフィルムの層は破れてしまい、小さな穴が開いてしまいます。こういった小さなリスクが製造から購入されて家に保管されるまでに多く存在します。

 2つ目は内包される製品によるピンホールです。食品で多いのは、内包物が尖っていたり、骨があったりするようなものは、製品自体が袋を傷つけ、穴を開けてしまいます。ただ包装するだけでは穴が開かなくても、包装工程で一時的に脱気する工程があると、内容物と袋の距離が縮まり、意図せずフィルムが硬い内容物に押さえ付けられる形となり、穴が開く場合もあります。硬く鋭い製品は、内容物だけでなく、その製造環境にも原因があります。


ピンホール対策の考え方

 では、これらのピンホールの原因を、どうやったら防止することができるでしょうか?1つはその原因となる環境に対し、対策を講じることです。

 バリがあるのなら、そのバリを定期的にチェックし、ヤスリをかけるなど、引っ掛かりが起こらない環境にする。製造中、内容物にフィルムを差してしまうなら、刺さらない塩梅はないか検討するなど、製造環境を変えることで対策が取れます。

 もう1つは、食品包装自体に対策を講じる方法です。穴が開くなら、食品包装自体を強くする、ピンホールに強いフィルムに変えていくという考え方です。

 素材研究も進歩してきていて、少々の突き刺しでは穴が開かないような素材も開発されています。もちろんコスト面では大きく上がってしまいますが、ピンホールが発生した時のリスクや、収益、製造コストなど、それらのバランスが取れる範囲での変更は検討しても良いでしょう。


食品包装によるピンホール対策

 では、食品包装では、どういった視点で対策を考えていけば良いでしょうか?それにはま、袋の外側からの穴なのか、内側からの穴なのかを把握する必要があります。

 食品包装では、複数のフィルムを重ね合わせて作られていることがほとんどです(参考:包装フィルムの構造)。ここで対策を考えた時に、袋の外側からの外圧が原因で穴が開いているのなら、外側のフィルムに対策をした方が、より効果が認められます。内側の商品が原因なら、製品に一番近いフィルムに対策をした方が、効果が出やすいです。また、柔らかいNYやPEの構成部分に対策をすることも良いと思います。柔らかいということは、それだけ突き刺しに対してフィルムが粘るため、穴が開きにくくなります。

 では、食品包装という視点では、どういった方法で対策ができるかですが、以下のようなことが例として考えられます。

1.フィルムの厚みを変える
2.フィルムを柔らかい材質に変える
3.突き刺し強度の強いフィルムに変更する

 これらはコスト的にも現状よりも上がることが多いので、まずは製造から販売までの環境改善を先にするべきですが、設計的に元々あっていなかったという場合もあるので、手段の一つとして覚えておくと良いでしょう。

 では、それぞれについて解説していきます。

1.フィルムの厚みを変える

 フィルムにはそれぞれ、厚みが購入時に選択されています。その厚みはフィルムを製造しているメーカーで一定の厚みが決められています。よく使用するグレードのものは厚みも数種類あるので、それを一つ上の厚みに変更することで、フィルム全体が厚くなり、突き刺しで穴が突き抜けにくくなります。表面が突き抜けないだけでも、バリア層が破壊されなければ品質的には一定の安全が確保されるため、大きな事故になることを防げます。

2.フィルムを柔らかい材質に変える

 次に柔らかい材質にすることで、袋自体に柔軟性を持たせる方法です。PPなど硬い材質を使用しているなら、PEなどの柔らかい材質に変更します。また、すでにPEを使用しているなら、押し出しラミネートという手法を使うこともできます。高温で溶かしたPEを通常のPEに流し込む方法です。流し込むことで通常のPEよりもさらにフィルムに柔軟性が出て、より突き刺しに強いフィルムとなります。

 注意点としては、柔らかいフィルムに変更すると、袋自体にコシがなくなるため、直立性が悪くなったり、製造ライン上で使いにくさが出てくることがあります。そのあたりは、現場や営業とも相談して、確認していた方が良いでしょう。

3.突き刺し強度の強いフィルムに変更する

 最後は、フィルム自体を突き刺し強度の強いフィルムに変更することです。フィルムのグレードの中には突き刺し強度に特化させたフィルムがあります。このフィルムは、少々尖ったもので突き刺しても、相当の力を入れないと穴が開かないようなものまであります。

 安全対策としてはこれ以上ないくらいの対策ですが、ここまでの強度を持ち合わせたフィルムであるため、流通量も少なく、コスト的にも大きく上がってきます。商品の利益率などと相談した上での変更をお勧めします。


まとめ

 今回は、ピンホールについて見てきました。フィルムも日々改良されて、さまざまな特徴を持った製品が発売されています。ピンホールに限らないと思いますが、何よりも原因を見極め、どこを改善すべきかを明確にすることで、より良い対策になると思います。