【食品包装基礎】(5)製版と印刷

製版と印刷 食品包装基礎

 ここでは、フィルムへの印刷工程について詳しく見ていきたいと思います。近年では技術の進歩で印刷方法も多様化していますが、今回はフィルムの印刷で最も使用されているグラビア印刷にポイントを絞って話したいと思います。


グラビア印刷とは

 凹版印刷の一種であるグラビア印刷は、繊細で麗美な表現に優れた印刷方法です。そのため、写真などの再現性に適しているため、食品包装など美粧性を必要とする製品に好まれて使用されている印刷方法でもあります。メリットとしては、以下が挙げられれます。

グラビア印刷のメリット

①色の表現力が高い
 繊細で濃淡の表現も出来ることから、多彩な色を用いた印刷が出来ます。凹版の特徴として凹みの深さを変えることでインク量が変えられるため、このような濃淡まで表現できる特徴が出てきます。

②多くの基材に印刷できる
 紙以外に、プラスチック系フィルムにも印刷が出来るため、対応用途が広いのも特徴です。速乾性や高い密着性が、基材を選ばずに印刷ができる理由です。

また反対に、デメリットもあります。

グラビア印刷のデメリット

①コストが高め
 金属の円柱を削って「版」を作るため、コストがやや高く付きます。これは、色の表現を細かくすればするほど、必要になる版の本数も増えるため、表現性と予算のバランスが必要となります。

②細い線や色数が増えるとズレが生じやすくなる
 色細やかな表現をするために使用する版を増やしていくと、インクを順番に重ね合わせて色を表現する特性上、ズレが生じやすくなります。また細かな線の表現も、同様の理由からズレが生じやすくなります。

 これらのメリット・デメリットを理解したうえで、デザインの段階から印刷でどこまで表現させるか、どこまで表現できるかをイメージしていかなければなりません。


製版

 印刷するためには、その前段階として「版」を作らなければなりません。グラビア印刷の場合の版は円柱の金属シリンダーを彫っていきます。ハンコは凸の方に朱肉をつけますが、グラビア印刷の場合はその反対で、彫った時に出来る「セル」と呼ばれる孔にインクを付着させ、フィルムに押し付けて印刷をしていきます。

 版は、写真などの入るパッケージを印刷する場合、シアン、マゼンダ、イエロー、墨、白の最低5つの版を作ります。この5つの版で色が表現できるように袋のデザインデータから色を分解して、それぞれのシリンダーをレーザーなどで削っていきます。

 印刷用の版は1年から2年の範囲で印刷メーカーで管理されています。この「1年」という単位は『発注してから次の発注までの期間』です。1年以内に次の発注があると、その期間はリセットされます。長期で使用されなかった版は、サビなどで版の表面が劣化し、印刷で文字や色が欠けたりするため「落版」という宣言がされて、発注側が使用できなくなります。落版となった版は削り直され、再利用されます。そのため、発注側は落版となった商品は改めて版を作り直してもらわないといけなくなるため、新製品のときと同じように版の製造費用が発生します。


版から色が表現される仕組み

 製版で出来た版には、デザインに合わせていくつものセル(孔)が密集して彫られています。印刷のときにそのセルにインクが詰め込まれフィルムに転写されますが、それを墨、シアン、マゼンダ、イエロー、白といった具合に重ねていくことで、点の集まりの重なり具合で色に濃淡や色相が生まれ、多くの色が表現されます。それは小さな小さな点の集まりなので、人が肉眼で見ると、あたかも様々な色で塗り分けられたように見えるのです。食品包装などの印刷物を25~30倍くらいのルーペなどで見ると、シアン、マゼンダ、イエローといったドットが集まっているのが分かります。


印刷

 印刷は付着したインクが擦れなどで剥がれないように、袋の表面にあたる面の裏側にインクが付けられるので、色の濃い墨版が先に、一番色が透けやすい白版が最後に印刷されます。そうすることで、表から見た時に色がはみ出ず、きれいなラインで表現されるようになります。

版のイメージ

 

 その中でも白は、多くが全面を塗りつぶすようにベタ塗りにされます。そうすることで、白の前にある色をよりはっきりと映し出すことが出来ます。また真空包装するような商品は、袋と製品が引っ付きやすいため、中身が透けて見えることもあります。そのようなときは、白を2版使って色に厚みを出したり、コンクという白を使用して1版でより濃い印刷を施すことで、多少透け感を緩和することが出来ます。

 その他、アルミを使用した袋の場合、白をあえて入れないことで下に来るアルミ地を透けさせる演出方法もあります。アルミは反射し易いので、白がないことでそれ以外の版の色がアルミに影響して反射したように見えるので、一部の文字や画像をキラキラさせたい時に使用されます。

 印刷物は「YMCK」で表現され、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(ブラック)を意味しています。パソコンのモニターなどはRGB(レッド、グリーン、ブル)で色が再現されるので、モニターで作られた色が製版されるときに表現の違う方法で色が作られるため、画面で見た色と印刷した色が微妙に変わってくることになります。

 ちなみにブラックは「K」と記載されますが「Key Plate」のKだと言われます。「B」でないのは、ブルー(Blue)やブラウン(brown)と間違うからと一説には言われています。


まとめ

 今回は製版と印刷について説明しました。簡単にまとめると以下になります。

・印刷するには「版」が必要。
・版は「セル」という孔の集まりで出来ている。
・印刷には、印刷する版の順番が決まっている。

 版や印刷を工夫することで、パッケージでさまざまな表現をすることが出来ます。ここに上げていない手法も数多くあるので、こんな表現をしてみたいとイメージが湧いたときは、メーカーさんに相談したりなどして、実現する手法がないか調べてみてくださいね。